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【2024年度版】扶養者資格の再確認について。

2024/11/21

毎年度実施されている、全国健康保険協会(以下、協会けんぽ)の「被扶養者資格の再確認」が、今年度も行われます。

社会保険の適用拡大により、2024年10月から厚生年金保険の被保険者数51人以上の企業は特定適用事業所となり、社会保険の適用対象となる短時間労働者の範囲がさらに広がっています。従業員の家族が短時間労働者として社会保険を取得するケースもあるため、再確認の際には扶養解除の申出漏れがないように従業員に周知することも大切です。

今回の記事では、協会けんぽに加入している企業の実務担当者が理解しておくべきポイントを解説します。

なお、健康保険組合でも同様に被扶養者資格の再確認が実施されますが、実施時期や確認方法はご加入の健康保険組合にご確認ください。

 

被扶養者状況リストの到着

2024年10月上旬から11月上旬にかけて、協会けんぽから企業宛に被扶養者状況リストなどの書類が届いています。企業はこの被扶養者状況リストをもとに、被扶養者資格の再確認を進めていきます。

再確認ができない状態が続く被扶養者については、法令等により被保険者証が無効となる可能性もありますので、必ず提出してください。

なお、再確認の対象となる被扶養者がいない事業所には書類は発送されないため、今回の再確認および提出は不要です。

1 対象となる被扶養者

対象となるのは、2024年9月14日現在の被扶養者です。(任意継続被保険者の被扶養者を除く)

ただし、以下の被扶養者は対象外のため再確認は不要です。(被扶養者状況リストの備考欄に「確認不要」の印字がされています。)

・2024年4月1日時点で18歳未満(2006年4月2日以降生まれ)の被扶養者

・2024年4月1日以降に被扶養者となった人

2 書類の種類

協会けんぽより書類一式が届いたら、以下の書類が同封されているか確認してください。

①被扶養者状況リスト(2枚複写)

②被扶養者資格の再確認方法やリストの記入方法等についてのリーフレット

③被扶養者調書兼異動届

④被扶養者現況申立書

⑤マイナ保険証利用促進チラシ

⑥返信用封筒

3 提出期限

2024年11月29日(金)

 

従業員への扶養状況の確認

ここからは、被扶養者資格の再確認の手順について解説します。

まずは、被保険者である従業員に対し、被扶養者ごとの確認区分に応じた認定要件(今後も継続して被扶養者となるために確認が必要な要件)を満たしているか確認をします。

1 確認区分とは

協会けんぽでは、2024年5月10日〜8月13日に実施したマイナンバー情報の照会で取得した被扶養者情報をもとに、被扶養者を以下の7つの区分に分けています。この区分を確認区分といい、被扶養者状況リストの「確認区分」欄に記載されています。

(出典)協会けんぽ『被扶養者資格の再確認とご提出のお願い』P3

確認は文書または口頭で行います。協会けんぽより調査票が紹介されていますので、参考にしてください。

参考・ダウンロード|協会けんぽ『被扶養者資格再確認調査票 表(Excel)』

参考・ダウンロード|協会けんぽ『被扶養者資格再確認調査票 裏(PDF)』

2 確認内容

確認区分によって確認する内容が異なります。

なお、今回の記事において、年収に関して「130万円」とされる部分については、60歳以上または障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者は「180万円」に読み替えて対応してください。

①同居

【確認内容】

被扶養者の今後の見込み年収額が、「130万円未満」かつ「被保険者の年収の1/2未満」であるか

②別居

【確認内容】

被扶養者の今後の見込み年収額が、「130万円未満」かつ被保険者からの「仕送り額より少ない」か

③要同居

【確認内容】

被保険者と同居が必要な被扶養者について、以下のいずれも満たしているか

・被保険者と同居(同一の世帯または世帯分離)している

・「①同居」の要件を満たしている

世帯分離など、同居していても別世帯である場合は「要同居」として判定されるため、同居の確認が必要となります。 

被保険者と同居が必要であるかは、以下の図を参考にしてください。

④海外在住

被扶養者は、原則として国内に居住している(日本国内に住民票がある)ことが必要です。ただし、留学生や海外赴任に同行する家族など、海外特例要件を満たし、必要な届出を行った場合は被扶養者になることができます。

【確認内容】

以下の図の海外特例要件を満たしているか

⑤資格重複

【確認内容】

被扶養者自身が被保険者として健康保険に加入していないか

被扶養者自身が被保険者になった場合は扶養解除となります。

国民健康保険の脱退手続を失念していたなど、現在ほかの健康保険への資格取得をしていない場合は、国民健康保険の脱退手続を行うことで今後も継続して被扶養者となれる可能性があります。

⑥収入超過

【確認内容】

以下の2点を確認してください。

・被扶養者の現時点および今後の見込み年収額

・収入超過の原因が人手不足による労働時間延長等に伴う一時的なものであるか

確認後、その結果に応じた対応をすることとなります。

【人手不足による労働時間延長等に伴う一時的な収入超過への対応】

被扶養者の年収が130万円以上であっても、人手不足による労働時間の延長等により一時的に収入が増加している場合は、「一時的な収入変動」に係る事業主の証明書を提出することで被扶養者と認められる場合があります。

以下の証明書を従業員に渡し、被扶養者に勤務先の事業主の証明書を発行してもらうように伝えてください。なお、この措置は、あくまで一時的な事情として認定を行うことから、同一の被扶養者につき原則として連続2回までです。

参考・ダウンロード|厚生労働省『被扶養者の収入確認に当たっての「一時的な収入変動」に係る事業主の証明書』

⑦判定不能

被扶養者の現在の状況(収入額、同居または別居かなど)を確認し、どの確認区分に該当するかを判断します。次に、その確認区分に従って認定要件の確認を行ってください。

 

確認結果を被扶養者状況リストに記入

従業員に扶養状況を確認後、その結果を被扶養者状況リストに記入します。

1 正しい確認区分を記入する(現況と相違がある場合のみ)

被扶養者状況リストに記載されている確認区分が現況と相違する場合は、二重線で抹消し正しい確認区分を記入します。

2 認定要件を満たすとき

継続して被扶養者となります。「変更なし」の欄にチェックを入れてください。

確認区分が「判定不能」の被扶養者が以下に該当する場合は、該当項目にもチェックを入れます。

【被扶養者が被保険者と別居の場合】

「被保険者と別居している」にチェック

【被扶養者が海外に在住(国内に住民票なし)の場合】

3 認定要件を満たさなかったとき

扶養を解除しなければなりません。「解除となる」の欄にチェックを入れ、備考欄に解除理由の番号(①死亡 ②離婚 ③就職 ④収入増加 ⑤75歳到達 ⑥障害認定 ⑦その他)を記入してください。

【今回扶養から解除となる場合】

「解除となる」欄にある「被扶養者調書兼異動届を添付」欄にチェックし、備考欄に解除理由の番号を記入

【すでに被扶養者異動届または資格喪失届を提出済の場合】

「解除となる」欄にある「日本年金機構へ届出済」欄にチェックし、備考欄に解除理由の番号を記入

 

提出書類の準備および郵送

提出書類は、認定要件の確認結果(「変更なし」または「解除となる」)や被扶養者の確認区分によって異なります。

以下の図を参考に被扶養者ごとに必要な提出書類を準備のうえ、2024年11月29日(金)までに同封の返信用封筒で協会けんぽに提出してください。

ここからは、各提出書類について解説します。

1 被扶養者状況リスト

ここまで解説した手順にしたがって、リストを作成してください。

なお、このリストは2枚複写です。1枚目を提出し、2枚目は事業主控として保管してください。

2 被扶養者現況申立書

被扶養者が以下に該当するときに、現在の状況を申し立てる書類です。

・被保険者と別居

・海外在住

・世帯分離をしているとき

・確認区分が「収入超過」と判定されているが、扶養を継続するとき

参考・ダウンロード|協会けんぽ『被扶養者現況申立書』

3 仕送りの事実と仕送り額が確認できる書類

送金者名、受取人名および仕送り額が確認できる書類を提出します。(直近1か月分)

なお、学生は省略可能です。

振込の場合:預金通帳等の写し、振込明細書など

送金の場合:現金書留の控えなど

4 被保険者と被扶養者の住民票

世帯分離をしているとき、確認区分が「要同居」と判定されることがあります。その場合、同じ住所に住んでいることを証明するため、住民票を提出します。

5 海外特例の該当が確認できる書類

該当する海外特例要件ごとに定められた書類を提出します。

6 被扶養者調書兼異動届、健康保険証

確認の結果、扶養解除となる被扶養者がいる場合、被扶養者調書兼異動届を記入のうえ提出します。このとき、被扶養者の健康保険証も返却となるため添付してください。(高齢受給者証や特定疾病療養受療証なども交付されている場合、これらも返却となるため添付)

参考・ダウンロード|協会けんぽ『被扶養者調書兼異動届』

なお、健康保険証を返却できない場合、健康保険被保険者証回収不能届を添付してください。

参考・ダウンロード|協会けんぽ『健康保険被保険者証回収不能届』

 

おわりに

本来、被扶養者が扶養の要件に該当しなくなったときは、その都度、被保険者である従業員が企業に報告しなければなりません。しかし、扶養から外す報告は忘れがちな報告のひとつです。

そのためにも、たとえば卒業・就職などライフスタイルが変わる人の多い4月前後には扶養の外し忘れがないよう社内周知するなど、従業員の扶養に関する認識を高めることをおすすめします。

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