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社会保険の被扶養者の認定基準 ~手続きおよび流れ~

2025/03/27

扶養には、税法上の扶養と社会保険上の扶養の2種類があります。

社会保険に加入している役員や従業員(以下、被保険者)が

家族を社会保険の扶養に入れることにより、

被扶養者となった家族の病気やケガ、出産、死亡などでも保険給付が行われます。

今回の記事では、協会けんぽに加入しているときの社会保険の被扶養者の認定基準や、

手続きの流れについて解説します。

扶養情報の確認

被保険者から、婚姻や出産などの理由により家族を扶養追加したいと

連絡があったときは、扶養情報を確認します。

間違いを防止するためにも、以下の確認事項を記載した書類(任意書式)を

提出してもらうことをおすすめします。

【扶養情報の確認事項】

(1)扶養追加日

(2)扶養追加の理由

(3)扶養追加したい人の名前(ふりがな)

(4)扶養追加したい人の電話番号(配偶者の場合のみ)

(5)生年月日

(6)性別

(7)被保険者本人との続柄

(8)同居の有無

※別居時は、「住所」「1回当たりの仕送り額」「1年間の仕送り回数」を確認してください。

※扶養家族が留学などにより海外に居住しているときは

「日本に住んでいない理由」を確認してください。

(9)扶養家族の職業と年間の見込み収入額

(10)共働き夫婦の子どもなど、夫婦で共同して扶養している家族を扶養追加したいときは、

共同扶養者(被保険者の配偶者)の年間の見込み収入額

(11)扶養家族のマイナ保険証の利用の可否

※マイナ保険証を利用できない場合については、下記の理由が考えられます。

・マイナンバーカードを持っていない

・マイナ保険証の利用登録をしていない

・マイナンバーカードの電子証明書の有効期限が切れている など

(12)資格確認書の発行要否

また、年金事務所へ届出をするときは、扶養家族のマイナンバーがあると手続きがスムーズです。

扶養家族のマイナンバーの収集も行ってください。

被扶養者の範囲と被扶養者の収入要件

健康保険では、被保険者に扶養されている家族を被扶養者といいます。

被扶養者に該当する家族は「被扶養者の範囲」と「被扶養者の収入要件」の

いずれも満たしている必要があります。

【被扶養者の範囲】

主として被保険者の収入により生計を維持する、以下の被扶養者の範囲図に該当する家族です。


 【被扶養者の収入要件】

被扶養者の収入要件は、被保険者との同居の有無によって異なります。

なお、今回の記事で「130万円」とされる部分は、60歳以上または

おおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は

「180万円」に読み替えて対応してください。

(1)同居のとき

被扶養者の今後の見込み年収額が、「130万円未満」かつ「被保険者の年収の1/2未満」



(2)別居のとき

被扶養者の今後の見込み年収額が、「130万円未満」かつ「被保険者からの仕送り額より少ない」


なお、被扶養者の年収が130万円以上であっても、人手不足による労働時間の延長等により

一時的に収入が増加している場合は、「一時的な収入変動」に係る事業主の証明書を

提出することで被扶養者と認められる場合があります。

以下の証明書を被保険者に渡し、被扶養者の勤務先の事業主に

証明書を発行してもらうように伝えてください。

参考・ダウンロード|厚生労働省『被扶養者の収入確認に当たっての「一時的な収入変動」に係る事業主の証明書』


この措置は、あくまで一時的な事情として認定を行うことから、

同一の被扶養者につき原則として連続2回までとなります。

必要書類の受領

被扶養者の認定基準を満たすかを確認するため、被保険者に対して必要な書類を案内し、受領します。

【続柄確認の書類】

提出日からさかのぼって90日以内に発行された被扶養者の戸籍謄(抄)本、または、住民票の写し

(コピー不可、マインナンバーの記載がないもの)

※住民票の写しは、被保険者が世帯主で、被保険者と被扶養者が同居のときに限ります。

【被扶養者の収入要件確認の書類 例】

加えて、別居のときは仕送り額が分かる書類(現金書留の控えや銀行の通帳のコピーなど)が

別途必要になるなど書類が追加となる場合もあります。

参考|厚生労働省『従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き』

届書の作成および提出

準備が整ったら「健康保険 被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)」を作成し、届出を行います。

提出時期:事実発生から5日以内

届出様式:健康保険 被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)(※)

添付書類:「必要書類の受領」で受領した続柄確認の書類、収入要件確認の書類

届出先 :事務センターまたは管轄の年金事務所

届出方法:郵送または持参(事務センターは郵送のみ)

参考・ダウンロード|日本年金機構『健康保険 被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)』

※被扶養者が20歳以上60歳未満の配偶者の場合、原則として国民年金の第3号被保険者となります。この届書は国民年金の様式と一体化しているため、合わせて国民年金第3号の手続きを行うことができます。

【確認書類の添付について】

続柄または収入要件の確認書類について、それぞれ以下の場合は原則として添付不要です。

(1)続柄確認の書類 ※以下のどちらにも該当するとき

・被保険者と被扶養者のマイナンバーが記載されている

・続柄の確認書類により企業が続柄を確認し、被扶養者(異動)届の備考欄の

「続柄確認済み」にチェックが入っている



(2)収入要件確認の書類 ※以下のいずれかに該当するとき

・被扶養者が16歳未満である

・被扶養者が所得税法上の控除対象配偶者・扶養親族であることを企業が確認し、

被扶養者(異動)届の「事業主確認欄」に〇が付されている

※被保険者の税法上の合計所得金額が1,000万円を超える場合や、

60日以上さかのぼっての申請の場合は書類添付が必要

【資格確認書について】

2024年12月、被扶養者(異動)届に「資格確認書発行要否」欄が新設されました。

被扶養者が資格確認書の発行を希望する場合は、この欄にチェックを入れて届出してください。

マイナ保険証が利用できない人は、チェックの有無にかかわらず資格確認書が発行されます。

しかし、チェックを入れない場合、発行までに30〜50日程度の期間を要するため、

チェックを入れることをおすすめします。


被扶養者の認定

マイナ保険証の有無により、届出が受理され被扶養者として認定された後の流れが異なります。


①マイナ保険証を利用できる方

通常は、日本年金機構が届書を受理してから2〜5営業日程度でマイナ保険証の利用が可能となります。

(マイナポータルから確認可能)

「資格情報のお知らせ」が届き次第、速やかに被保険者に渡してください。

(資格確認書の発行希望者には「資格確認書」も届きます。)

②マイナ保険証を利用できない方

「資格情報のお知らせ」と「資格確認書」が届き次第、速やかに被保険者に渡してください。

「資格確認書」を提示することで、保険診療の受診が可能となります。

参考|厚生労働省『マイナンバーカードの健康保険証利用について』


3月4月の入退社が多い時期は年金事務所の処理も混雑します。

届書の届出日までに、被扶養者の認定基準を満たしていることの確認や

書類作成などの対応を行っておくと、早めに病院を受診したい被扶養者の手続きも

スムーズにすすめることができます。


おわりに

労務担当者は、定期的に被保険者の扶養家族の状況を確認することをおすすめします。

とくに、学生だった子どもが社会人になったときなどは、

扶養削除の手続き漏れが生じる場合もあるため留意してください。

また、毎年度、被扶養者資格の再確認が実施されます。被扶養者の範囲や収入要件を

十分に理解しておくことが大切です。

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