「くるみん認定制度」とは、一定の基準を満たした企業からの申請に対して、
厚生労働大臣が「子育てサポート企業」として認定する制度です。
認定基準の違いによって、くるみん・プラチナくるみん・トライくるみんの3種類があり、
仕事と育児の両立を支援する企業であることの証として、社内・社外へのアピールにも役立ちます。
2025年4月からは、次世代育成支援対策推進法の改正に伴い、
くるみんおよびプラチナくるみん認定の基準等も改正されました。
今回の記事は、改正内容も含めた3種類のくるみん認定制度について解説します。
雇用管理の改善に取り組む企業を支援するため、厚生労働省では3つの認定制度を設けています。
参考|厚生労働省『企業の人材確保・定着に役立つ3つの認定制度のご案内(えるぼし・くるみん・ユースエール)』
このうち、くるみん認定制度とは、仕事と育児の両立支援に積極的に取り組む企業を
「子育てサポート企業」として認める制度です。
一般事業主行動計画(以下、行動計画)を策定した企業が、
一定の基準を満たして申請した場合に認定を受けることができます。
【認定の種類】
くるみん認定制度には「くるみん」「トライくるみん」「プラチナくるみん」の3種類があります。
それぞれ認定基準が異なり、なかでもプラチナくるみんは、
より高い水準の取り組みを行った企業に対して認定されます。
認定企業数は、2024年9月末時点で、くるみん認定が4,747社、
トライくるみん認定が2社、プラチナくるみん認定が677社となっています。
このほか、上記3種類の認定企業が不妊治療と仕事の両立に取り組んで一定基準を満たした場合、
それぞれの認定にプラスして認定されます(プラス認定といいます)。
【くるみんマーク等】
認定を受けた企業には、その証として「くるみんマーク」「トライくるみんマーク」
「プラチナくるみんマーク」が付与されます。
「くるみんマーク」「トライくるみんマーク」には、最新の認定年が記載され、
認定を受けた回数に応じて星の数が変わります。
マークを自社商品や広告、求人票などにつけることにより、
子育てサポート企業であることをアピールできます。
(出典)厚生労働省『くるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについて』
くるみん認定制度により「子育てサポート企業」として認定されると、以下のようなメリットがあります。
認定を受けることによりさまざまなメリットがありますが、以下のことに注意が必要です。
①雇用環境の整備が必要
認定を受けるには約10種類の認定基準を満たすことが必要です。
雇用環境の整備が進んでいない企業の場合、達成までに時間を要する場合があります。
②プラチナくるみんはすぐに申請できない
プラチナくるみんの申請には、くるみん認定またはトライくるみん認定を
受けていることが前提となります。
これまでどの認定も受けていない場合は、プラチナくるみんの申請ができません。
③一部の従業員の負担が増える可能性がある
雇用環境の整備は、育児休業が取得しやすくなる、育児による
短時間勤務がしやすくなるなど、子育て中の従業員の働きやすさに対するメリットがある一方、
休業中や短縮時間分の業務をほかの従業員がカバーしなければならない可能性もあります。
業務を代替する一部の従業員に負担がかかる状況が続くことのないよう、
子育てをしていない従業員も含めた雇用環境の整備を考える必要があります。
認定を受けるまでの流れは以下のとおりです。
①各種状況の把握
行動計画を策定する前に、仕事と育児の両立について、
職場内の課題や従業員のニーズを把握します。
子育てをしていない従業員も含めた多様な労働条件の整備などの取り組みを行うため、
さまざまな立場の従業員にヒアリングをすることをおすすめします。
【常時雇用する従業員が101人以上の場合】
2025年4月以降に行動計画の策定・変更を行う場合、直近の事業年度の
「育児休業等の取得状況」や「労働時間の状況」の把握も行う必要があります。
(100人以下の企業は努力義務)
把握後は、企業の実情に応じて課題を分析します。
②行動計画を策定
①で把握した状況などを踏まえ、行動計画の策定に必要な
「計画期間」「目標」「目標を達成するための対策の内容と実施時期」を具体的に定めます。
認定の申請をする場合、認定基準を踏まえた行動計画の策定が必要です。
計画内容が認定基準に合致するか不明な場合は、策定時に都道府県労働局雇用環境・
均等部(室)に確認することをおすすめします
(認定基準については、次の「3種類それぞれの認定基準」で解説します)。
【常時雇用する従業員が101人以上の場合】
2025年4月以降に行動計画の策定・変更を行う場合、「育児休業等の取得状況」や
「労働時間の状況」に関する数値目標の設定が義務付けられました。
以下のパンフレットに、数値目標の例が記載されています。参考にしてください。
参考|厚生労働省『くるみん認定・トライくるみん認定・プラチナくるみん認定を目指しましょう!!!』P11
③行動計画を公表し、従業員に周知
行動計画の策定後、おおむね3か月以内に行動計画を一般に公表し
(厚生労働省が運営する「両立支援のひろば」や自社サイトへの掲載など)、従業員への周知を行います。
認定の申請をする場合、一般公表日や従業員への周知日が分かる書類が
必要になるため保存しておくことが必要です。
④行動計画を策定した旨を届出
行動計画の策定後おおむね3か月以内に、「一般事業主行動計画策定・変更届」を
都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に届出します。
⑤行動計画の実施、効果の測定
行動計画に定めた目標を達成できるように、計画に掲げた対策を実施します。
定期的に、取り組み状況や数値目標の達成状況などの確認を行ってください。
⑥認定申請(くるみん、トライくるみん)
行動計画期間が終了した後、くるみん認定またはトライくるみんの認定基準を
すべて満たした場合は認定の申請を行います。
⑦くるみんの認定、トライくるみんの認定
子育てサポート企業として、くるみんマークまたはトライくるみんマークが付与されます。
⑧認定申請(プラチナくるみん)
くるみんまたはトライくるみんの認定後の行動計画期間が終了した後、
さらに高い水準の取り組みを行うことで、プラチナくるみん認定が申請できます。
認定されるためには、プラチナくるみんの認定基準をすべて満たすことが必要です。
⑨プラチナくるみんの認定
優良な子育てサポート企業として、プラチナくるみんマークが付与されます。
各項目の詳細については、以下の厚生労働省のパンフレットを参考にしてください。
参考|厚生労働省『くるみん認定・トライくるみん認定・プラチナくるみん認定を目指しましょう!!!』P9
2025年4月からくるみん認定制度の認定基準が一部変更されました。
認定を受けるためには、認定基準をすべて満たす必要があり、「くるみん」「トライくるみん」
「プラチナくるみん」の3種類それぞれで基準が異なります。
行動計画の策定をする前に、認定基準を十分に理解したうえで準備を進めていくことが大切です。
なお、従業員数300人以下の企業(次世代育成支援対策推進法に定める中小事業主)は、
一部の認定基準において特例が設けられています。
2025年4月から育児・介護休業法の改正が段階的に施行されます。
行動計画は、企業の自主的な取り組みを促すものです。
そのため、企業が設定した目標内容が法定化により義務となったときは、
認定の審査対象にならないため留意してください。
1 くるみん認定基準
くるみん認定は行動計画の策定・実施ごとに申請できるため、何回も認定を受けることができます。
認定基準は以下の9項目です。認定を受けるためにはすべてを満たす必要があります。
2 トライくるみん認定基準
トライくるみんは、くるみん、プラチナくるみんの認定基準の引上げを
踏まえて2022年4月に新設されました。
従来のくるみん認定基準を引き継ぎ、3種類のなかで最も認定基準が低く取り組みやすい認定といえます。
くるみん認定と同様、何回も認定を受けることができます。
認定基準は以下の9項目です。認定を受けるためにはすべてを満たす必要があります。
3 プラチナくるみん認定基準(特例認定基準)
プラチナくるみん認定は「優良な子育てサポート企業」として、申請により認定されます。
くるみん認定またはトライくるみん認定を受けた企業を対象とし、
より高い水準の取り組みを実施しなければなりません。
認定基準は以下の11項目です(特例認定基準ともいいます)。
認定を受けるためにはすべてを満たす必要があります。
2025年4月からの認定基準の改正に伴い、施行から2年間(2027年3月31日まで)は
旧基準でも申請できるなど、3つの経過措置が設けられています。
以下を参考にしてください。
参考|厚生労働省『施行から2年間のくるみん認定基準の経過措置について』
参考|厚生労働省『令和6年度末までの計画期間を含む行動計画の経過措置について』
くるみん認定制度の目的は、仕事と育児の両立を支援することです。
行動計画の策定は、くるみん認定を受けることを目的とするのではなく、
自社の課題などに即した計画内容となるよう十分に検討し、
雇用環境の改善につなげることを意識してください。
その結果、働きやすい企業として社内・社外から認知されるなど、
さまざまな効果が期待されます。