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2025年4月より男性の育児休業取得状況の公表義務が301人以上の企業に拡大されました

育児・介護休業法では、男性従業員の育児休業等の取得状況を年1回公表することが定められています。

これまで公表の義務は、従業員数が1,001人以上の企業に限られていましたが、

2025年4月より、従業員数が301人以上の企業に対象が拡大されました。

公表の期限は、各企業の事業年度(会計年度)により異なります。

今回の改正により、最も早く訪れる公表期限は2025年6月末です。

労務担当者は、自社が公表の対象となっているか、公表期限はいつか、

どのような内容を公表するかなどを早めに確認しておく必要があります。

男性の育児休業等の取得状況

少子高齢化が進み人手不足が深刻化する現状において、

社会全体として育児による離職を防ぐことが求められています

しかし実際には、長時間労働や夫婦間における家事・育児の負担の偏りなどから、

仕事をしながら子どもを生み育てることは容易ではない状況が存在しています。

厚生労働省の「令和5年度雇用均等基本調査」によると、

男性の育児休業取得率は前年度より13ポイント増加し、30.1%に達しました。

しかし、女性の育児休業取得率(84.1%)と比較すると、依然として大きな差があります。

政府は男性の育児休業取得率を、2025年までに50%、

2030年までに85%へ引き上げることを目標としています。

今後、男女ともに仕事と育児を両立できる環境づくりが、

企業にますます求められていくことが予想されます。

育児休業の取得状況の公表

育児・介護休業法にしたがった育児休業の取得状況の公表では、

まず以下の項目を理解し、自社の公表準備を進めます。

1 公表義務のある企業

常時雇用する従業員が301人以上の企業は、男性従業員の

育児休業等の取得状況を年1回公表しなければなりません。

すでに常用雇用する従業員が1,001人以上の企業は義務化されていますが、

2025年4月からは新たに301人以上1,000人以下の企業も対象に加わっています。

一時的に従業員数が301人を下回ることがあっても、

常態として301人以上を雇用している場合は公表義務があります。

特に、従業員数が300人近くの企業が新たに人を採用するときには注意が必要です。

常時雇用する従業員数が300人以下の企業であっても、常態として301人以上になった時点から

児休業等の取得状況を公表する義務が生じます。

この場合、常時雇用する従業員数が301人以上となった日が属する事業年度(会計年度)に、

その事業年度の「直前の事業年度」の状況を公表します。

「常時雇用する従業員」とは、以下①②のいずれかに該当する従業員をいいます。

雇用形態(正社員、契約社員、パート・アルバイトなど)は問いません。

①雇用期間の定めがない従業員

②雇用期間に定めがあるまたは日々雇用されているが、1年以上継続して雇用されている従業員

(雇入れから1年以上の継続雇用が見込まれる場合も含む)

2 公表内容

公表する内容は、公表を行う日の属する事業年度(会計年度)の

直前の事業年度(以下、公表前事業年度)における、以下①または②のいずれかの取得割合です。

②の育児を目的とした休暇制度の導入は努力義務のため、

自社で制度を設けていない場合は「①育児休業等の取得割合」を選択することになります。

公表は、取得割合の数値のほかに、その数値が「①育児休業等の取得割合」

または「②育児休業等と育児目的休暇の取得割合」のどちらの計算方法であるか、

また、算定期間となる公表事業年度の期間がいつからいつまでかもあわせて示します。

取得割合の計算方法における「育児休業等」とは、育児・介護休業法に基づく以下の休業のことを指します。

・育児休業(産後パパ育休を含む)

・3歳未満の子どもを育てる従業員に対して、所定労働時間の短縮措置(育児短時間勤務)を

講じない場合の代替措置として、育児休業制度に準ずる措置を講じた場合の休業

・小学校就学前の子どもを育てる従業員に対する努力義務の措置として、

育児休業制度に準ずる措置を講じた場合の休業

なお、取得割合の計算において、産後パパ育休とそれ以外の育児休業等を分けて計算する必要はありません。

取得割合の計算方法における「小学校就学前の子どもの育児を目的とした

休暇制度(以下、育児目的休暇制度)」とは、育児を目的とするものであることが

就業規則などで明らかにされている休暇制度を指しています。

たとえば、以下のような制度が育児目的休暇制度に該当します。

(例)

・失効した年次有給休暇を育児目的で使用できる休暇制度

・配偶者出産休暇制度 など

法定の育児休業等、子の看護等休暇、年次有給休暇などは、

育児目的休暇制度に該当しません。

同様に、2025年10月1日より柔軟な働き方を実現するための措置として講じられる、

従業員が就業しつつ子どもを養育することを容易にするための休暇(養育両立支援休暇)も該当しません。

取得割合を求める際、従業員数を集計するときのポイントは以下のとおりです。


育児休業の取得状況は、求職者が企業を選ぶときの選択材料にもなるため、

取得割合の計算方法は、他社と比較可能な数値で公表することが重要です。

法令で定められた計算方法で求めた数値を公表したうえで、

必要に応じてより詳細な情報や補足的な情報を任意で公表することも可能です。

なお、法令で定められた計算方法で求めた数値に加えて、

ほかの方法で求めた数値も公表する場合は、その計算方法もあわせて説明する必要があります。

3 公表方法

インターネットなど、誰でも閲覧できる方法で公表する必要があります。

厚生労働省は、それぞれの企業の自社サイトのほか、

厚生労働省が運営するウェブサイト「両立支援のひろば」での掲載も推奨しています。

参考|厚生労働省『両立支援のひろば』

なお、インターネットが利用できない場合は、取得状況(取得割合)を事務所に備え付け、

求めに応じて閲覧できるようにするなどとしても差し支えありません。

(公表方法の例)

・厚生労働省が運営する「両立支援のひろば」への掲載

・自社サイトへの掲載

・日刊紙や都道府県の広報誌への掲載

・事務所に備え付け、求めに応じて閲覧できるようにする(インターネット利用が難しい場合) など

4 公表期限

公表は、公表前事業年度終了後、速やかに(おおむね3か月以内)行う必要があります。

企業の事業年度末(決算時期)に応じて、公表期限が異なります。

下の表を参考に自社の初回公表期限を確認しておくことが重要です。

2025年4月の施行により最も早く初回公表期限を迎える企業は、3月に決算を行う企業です。

初回公表期限が2025年6月末であるため、公表内容や公表方法を決め、

必要な情報を収集するなどの準備を早急に行う必要があります。

(出典)厚生労働省『2025年4月から、男性労働者の育児休業取得率等の公表が 従業員が300人超1,000人以下の企業にも義務化されます』

【企業の事業年度(会計年度)が4月~翌年3月の場合 例】

公表前事業年度である2024年4月1日~2025年3月31日の期間における

育児休業等の取得状況を求め、2025年6月末までに公表する必要があります。

おわりに

男性の育児休業取得率は、企業の姿勢を対外的に示す重要な指標として、

育児・介護休業法に基づく取得状況の公表にとどまらず広く使用されています。

たとえば、一定の要件のもと、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画への記載や、

投資家が投資判断を行うための情報として開示される有価証券報告書への記載も義務付けられています。

また、企業が男女を問わずライフステージに応じて安心して働ける環境を整備することは、

ワークライフバランスを重視する従業員や育児・介護と仕事を両立する従業員にとって魅力となり、

離職防止や長期的な人材育成にもつながります。

企業は、男性の育児休業の取得率公表を法令遵守として捉えるだけでなく、

働きやすい職場づくりを進める機会として、積極的に活用していくことが重要です。

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