【2025年10月から適用】19歳以上23歳未満の被扶養者にかかる認定要件が変更されました。
2025年10月から、健康保険の被扶養者にかかる認定要件が一部変更されました。
この変更により、収入を増やしたいものの、年収の壁を意識して働き控え
(いわゆる就業調整)をしていた19歳以上23歳未満の家族は、
扶養の範囲内で収入を増やしやすくなります。
今回の記事では、認定要件の変更内容や企業の対応などについて解説します。
もくじ
認定要件が変更された背景
認定要件の変更内容
押さえておきたいポイント
企業が対応すべきこと
認定要件が変更された背景
近年、深刻な人手不足が続く状況において、労働力の確保とともに、
年収の壁による「就業調整」の対策が必要とされています。
就業調整とは、扶養から外れないようにするため、
収入や労働時間を調整することを指します。
一般的には配偶者や子どもによる働き方の調整が多く見られますが、
扶養家族であれば世代を問わず生じるものです。
たとえば子どもが被扶養者の場合、扶養から外れてしまうと
親である従業員の所得税等が増えたり、
子ども自身にも健康保険料の負担が発生するなど、
世帯の収入に影響が出ることがあります。
また、就業調整は人手不足の一因とも言われており、
労働力を確保したい企業にとっては悩ましい問題となっています。
こうした状況を踏まえ、「令和7年度税制改正」では、
特定扶養親族(※)がいる場合の扶養控除(いわゆる特定扶養控除)
の見直しや、特定親族特別控除の創設などが行われました。
そして、この税制改正に合わせて、19歳以上23歳未満の被扶養者にかかる健康保険上の認定要件が変更されました。
※特定扶養親族とは、税法上の用語です。
その年の12月31日現在で19歳以上23歳未満の扶養親族をいいます
(年齢だけでなく、合計所得金額などいくつかの要件を
満たす必要があります)。
くわしくは国税庁のサイトを参考にしてください。
参考|国税庁『専門用語集』
認定要件の変更内容
被扶養者としての届出にかかる家族(以下、認定対象者)について
認定要件が以下のように変更されました。

①変更対象者
被扶養者になった日(以下、扶養認定日)が属する年の
「12月31日時点の年齢が19歳以上23歳未満」(以下、19歳以上23歳未満)の
認定対象者が変更の対象です。ただし、被保険者の配偶者は対象外です。
【1月1日生まれの人に注意】
民法の規定が準用され、年齢は誕生日の前日において加算されます。
そのため、誕生日が1月1日の場合、前日の12月31日に年齢が加算されます。
②変更時期
2025年10月1日以降の被扶養者認定から適用されます。
③変更内容
19歳以上23歳未満の認定対象者の年間収入要件が、
「130万円未満」から「150万円未満」に変わります。
年間収入とは「今後1年間の収入見込額」です。
過去の収入額ではないことに注意してください
(年間収入には、給与収入のほか、年金収入、失業手当、
傷病手当金、出産手当金なども含まれます)。
なお、認定要件のうち、年間収入以外の要件に変更はありません。
(例)
扶養認定日:2025年10月20日
認定対象者の年齢:2025年11月1日に誕生日を迎え19歳になる
→この場合、扶養認定日時点では18歳ですが、
2025年12月31日時点の年齢は19歳であるため
年間収入要件は150万円未満となります。
押さえておきたいポイント
認定要件の変更について、実務上、労務担当者が
特に押さえておきたいポイントを紹介します。
①扶養認定日が基準(いつの要件が適用されるか)
変更前・変更後のどちらの認定要件を適用するかは、
届出日ではなく扶養認定日を基準として判断します。
そのため、扶養認定日が2025年10月1日以降であれば、
変更後の年間収入要件(150万円未満)が適用されます。
一方で、届出日が2025年10月1日以降であっても、
扶養認定日が2025年9月30日以前の場合は、
変更前の年間収入要件(130万円未満)が適用されます。
②扶養認定済みの被扶養者への影響
今回の認定要件の変更は、新たに扶養に入れる場合だけでなく、
すでに扶養認定されている方にも影響します。
2025年9月30日以前に扶養認定済みの19歳以上23歳未満の
被扶養者についても、2025年10月1日以降は、
変更後の年間収入要件(150万円未満)で判断されます。
したがって、2025年10月以降の年間収入が
150万円以上と見込まれた場合は、被扶養者の要件を満たさなくなります。
この場合、速やかに被扶養者削除(非該当)の手続きが必要です。
③学生であることの確認は不要
あくまで認定対象者の年齢(19歳以上23歳未満であるか)によって
判断されるため、学生であるか否かは問われません。
就職活動中やパート・アルバイトであっても、
19歳以上23歳未満であり年間収入が150万円未満であれば
年間収入要件を満たします。
④年間収入要件が130万円に戻るタイミング
被扶養者の年齢が12月31日時点で22歳の場合、
翌年からは年間収入要件が150万円から130万円に戻ります。
当該被扶養者の翌年1月1日時点における年間収入が
130万円以上150万円未満である場合は、被扶養者の要件を
満たさなくなるため、被扶養者削除(非該当)の手続きが必要です。
⑤一時的な収入増に伴う事業主証明の取扱い
これまで、被扶養者の収入が一時的に年間収入要件を超えた場合は
「年収の壁・支援強化パッケージ」に基づく事業主の証明により、
引き続き被扶養者として認定されていました。
今回の認定要件の変更についても同様に、
19歳以上23歳未満の被扶養者の年間収入が
150万円を一時的に超えた場合でも、事業主証明により
扶養認定を継続することができます。
なお、この措置は、新たに被扶養者としての認定を
受けようとする19歳以上23歳未満の家族も対象となります。
企業が対応すべきこと
労務担当者は、以下の対応を実施することで、
認定要件の変更を踏まえた適切な対応や手続きを
円滑に進めることができます。
1 社内への周知
従業員に対して、認定要件の変更について周知します。
今回の変更は、すでに被扶養者となっている家族が
より収入を得るため、働き方を見直すきっかけとなる場合があります。
また、これまで被扶養者になれなかった19歳以上23歳未満の家族を
新たに被扶養者として申請できる可能性もあります。
19歳以上23歳未満の家族を持つ従業員がいる職場では、
できるだけ早めに周知することをおすすめします。
また、自社で就業調整しながら働く19歳以上23歳未満の
パート・アルバイトがいる場合、年間収入が150万円までは
扶養の範囲内で働けることを伝えることで、労働時間を増やしてもらい、
人手不足を緩和できる可能性もあります。
2 社内様式などの見直し
被扶養者の申出書など社内様式がある場合、
認定要件の変更を反映した内容に改めます。
書面ではなく社内システムを通じて申出する場合は、
フォーム画面の改修が必要です。
3 扶養手続きのポイントを整理しておく
被扶養者の手続きを行う場合、変更後の認定要件が
適用されるか確認するためのポイントを整理しておくと
対応がスムーズです。
(例)
・認定対象者の生年月日(扶養認定日が属する年の12月31日時点の年齢確認)
・配偶者かどうか
・扶養認定日が2025年10月1日以降か
おわりに
今回の認定要件の変更は、年収の壁の見直しにあわせて実施されました。
労務担当者は、変更内容を正しく理解し、今後の手続きや
確認作業に備えることが重要です。


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