【2025年版】急性呼吸器感染症(ARI)とは。企業が知っておきたいインフルエンザ・新型コロナウイルス感染症対策
冬になると感染症の流行が懸念されます。
季節性インフルエンザ(以下、インフルエンザ)に加えて
新型コロナウイルス感染症も、季節を問わず引き続き注意が必要です。
従業員の健康を確保し、事業活動を維持するためには、これら感染症への対策が不可欠です。
今回の記事では、主にインフルエンザおよび新型コロナウイルス感染症に備えるために
企業が取り入れやすい感染症予防対策などについて、実務的なポイントを解説します。
本記事のポイント
〈感染症予防対策〉
・最新指針に基づいた「ARI」予防の徹底
インフルエンザやコロナを「急性呼吸器感染症(ARI)」として包括的に捉え、最新指針に沿った換気・加湿・予防啓発を行い、職場クラスターを防ぐ必要があります。
・出勤停止と報告ルールの明確化
感染時の出勤停止期間に法的強制力はないため、企業が独自に「発症後5日間」等のルールを定める必要があります。事前に周知し、現場の混乱を最小限に抑えましょう。
・2025年改正法と傷病手当金の活用
4月から学級閉鎖時も「子の看護休暇」が取得可能。欠勤時の給与補償(傷病手当金か有休か)についても、従業員へ適切に案内できるよう整理しておきましょう。
急性呼吸器感染症(ARI)とは
急性呼吸器感染症(ARI)とは、急性の上気道炎(鼻炎、副鼻腔炎、咽頭炎、喉頭炎)
または下気道炎(気管支炎、細気管支炎、肺炎)を指す病原体による症候群の総称です。
具体的には、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症、RSウイルス、ヘルパンギーナなどが含まれます。
2025年11月、厚生労働省は「急性呼吸器感染症に関する特定感染症予防指針(以下、指針)」を公表しました。
指針は、急性呼吸器感染症(ARI)に関し、平時の感染対策、まん延防止、適切な医療提供
などについて、国や自治体、医療関係者等が連携して進めるべき方向性を示すものです。
今後、指針に基づき急性呼吸器感染症(ARI)への対策を進めることとしています。
参考|厚生労働省『急性呼吸器感染症に関する特定感染症予防指針(令和7年厚生労働省告示第296号)』
インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の流行状況と主な症状・感染経路の違い
急性呼吸器感染症(ARI)のうち、インフルエンザおよび新型コロナウイルス感染症は
指針にも個別で記載されていることから、特に注意しておきたい感染症です。
インフルエンザは、例年12月から3月が流行シーズンといわれています。
今年は、11月中から各地で多くの感染者が発生しており、例年より早く流行期に入りました。
新型コロナウイルス感染症は、夏季・冬季に患者が増加する傾向があるとされていますが
通年で感染者が報告されているため、引き続き注意が必要です。
ここ数年は、インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の同時流行も懸念されています。
最新の流行状況の詳細は以下のサイトでご確認ください。
参考|厚生労働省『インフルエンザに関する報道発表資料 2025/2026シーズン』
参考|厚生労働省『インフルエンザ・新型コロナウイルス感染症の定点当たり報告数の推移』
【主な症状と感染経路の違い】
インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の主な症状と潜伏期間、感染経路の違いは以下のとおりです。
インフルエンザは主に飛沫・接触感染が中心ですが、新型コロナウイルス感染症は
より小規模な飛沫(エアロゾル)による感染リスクも指摘されており、
咳エチケットだけでは対策として不十分な場合があります。
この違いを踏まえ、換気の方法や頻度なども検討する必要があります。
職場での感染拡大防止策
インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症は、どちらも通常の風邪に比べて感染力が高いことが特徴です。
これらの感染症が企業内で流行してしまうと、多くの従業員が同時期に会社を休むなど
事業の継続に大きな影響を与えかねません。
そのため企業は、感染症の流行期にも、従業員が健康で安心して働ける環境の整備を行うことが重要です。
1 基本的な感染症対策(換気・加湿・消毒)
換気・加湿・消毒といった、基本的な感染症対策は取り入れやすい対策といえます。
2 従業員への感染症予防の啓発
従業員が個々に取り組める感染症予防について、以下のような啓発を行うことも効果的です。
以下のサイトでは、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症の感染防止や
ワクチンなどの情報がまとめて掲載されており、予防啓発のためのポスターも用意されています。
参考|厚生労働省『令和7年度 今冬の急性呼吸器感染症(ARI)総合対策』
参考|厚生労働省『咳エチケット』
参考|厚生労働省『手洗い』
3 産業医との連携
感染症対策の検討を進めるうえで不安が生じる場合には、産業医に助言を求めることも有効です。
産業医に医学的な立場から従業員の健康保持増進や職場環境の改善について助言してもらい、自社にあった形での感染症対策を一緒に検討することで、より万全な感染症対策を講じられます。
従業員が感染した場合の労務対応とルール整備
どれだけ予防や対策をしても、感染症の発生をゼロにすることは困難です。
企業は、従業員の感染が判明した「発生時」に、感染拡大を最小限に抑えるためのルールを整備しておくことが大切です。
1 感染報告ルールの策定と出勤停止期間を定める
従業員の感染に備えて、事前に申告方法や出勤停止期間を検討します。
【報告方法の明確化】
従業員本人または同居家族がインフルエンザ、あるいは新型コロナウイルス感染症
と診断された場合の報告フロー(例:直属の上長経由で労務部へ など)を確立し従業員に周知します。
【出勤停止期間の検討】
インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症のどちらに対しても、出勤停止期間を定める法令はありません。
そのため、企業が就業規則などで「自社のルール」として出勤停止期間を定めておくことをおすすめします。
なお、出勤停止期間を検討するうえでは、学校保健安全法施行規則で定められた以下の期間が参考になります。
(1)インフルエンザ
発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては、3日)を経過するまで
(2)新型コロナウイルス感染症
発症した後5日を経過し、かつ、症状が軽快(解熱剤を使用せずに解熱し、
かつ、呼吸器症状が改善傾向にあること)した後1日を経過するまで
2 休暇ルールを確認し、周知する
従業員本人が感染の症状により欠勤する場合は、通常の病欠と同様に取り扱います。
なお、本人の希望があれば年次有給休暇の取得も可能です。
ただし、年次有給休暇を事前申請としている企業では、当日申請や事後申請を
受け付けていないケースもあるため、自社の就業規則を事前に確認しておくことをおすすめします。
また、特別休暇(病気休暇)制度があれば、特別休暇が取得可能かも確認します。
たとえ症状が軽くても、従業員が無理せず安心して療養に専念できることが重要です。
そのため、労務担当者は、自社の休暇制度を把握したうえで、それぞれの休暇の取得方法を従業員へ周知する必要があります。
3 休業手当の支払が必要なケースを確認する
法令上、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症に感染した従業員の就業制限に関する規定はありません。
そのため、企業から従業員に対して感染を理由に自宅待機や休業を命じる場合は、休業手当(平均賃金の6割以上)の支払が必要です。
具体的には、以下のようなケースが該当します。
4 「子の看護等休暇」を活用する
小学校3学年修了までの子どもを養育する従業員は、法令により一年度に5日まで
(対象となる子どもが2人以上の場合は10日まで)子の看護等休暇を取得できます。
また、2025年4月に改正法が施行され、子の看護等休暇の取得事由には子どもの看病や
予防接種等のほか『感染症に伴う学級閉鎖への対応』が追加されました。
このことで、子どもが感染症に罹患していなくても子の看護等休暇が取得できます。
従業員が気兼ねなく制度を利用できるよう、改めて社内へ周知することも大切です。
傷病手当金の活用と従業員への説明ポイント
従業員(被保険者)が療養のために長期間(連続3日を超える)休業し、
そのあいだに給与が支払われない場合、「傷病手当金」の支給対象となります。
なお、ここでは協会けんぽの傷病手当金について解説します。
【傷病手当金の概要】
傷病手当金は、被保険者である従業員が業務外の病気やケガによる療養のために
仕事に就くことができず、給与が受けられない場合に支給されるものです。
具体的には、業務外の病気やケガ(インフルエンザ・新型コロナウイルス感染症も含む)で
働けない状態が連続3日間(待期期間※)続いた後、4日目以降の休んだ日に対して支給されます。
※3日間の待期期間:土日祝などの休日も含む
1日あたりの支給額は以下の計算式で算出します。
休んだ期間に給与の支払いがある場合は、傷病手当金は支給されません。
ただし、給与の支払いがあっても、その日額が傷病手当金の日額より少ない場合は、差額が支給されます。
傷病手当金の詳細は、協会けんぽのサイトでご確認ください。
参考|協会けんぽ『傷病手当金』
【年次有給休暇との違い】
労務担当者は、従業員から「年次有給休暇と傷病手当金のどちらを取得したらよいか」などと相談されることも想定されます。
どちらを取得するかは企業が一方的には決められず、企業のルールを踏まえ、最終的には本人の判断に委ねられますが、年次有給休暇と傷病手当金は支給額や支給される日が異なります。
従業員からの問い合わせに適切に回答するためにも、これらの違いを理解しておくことが重要です。
同じ日に年次有給休暇と傷病手当金の両方は選択できません。
どちらを選択するかは従業員本人の判断次第ですが、年次有給休暇の残日数や、療養が長引きそうかといった状況を踏まえ、適切に情報提供できるように準備しておくことが重要です。
おわりに
インフルエンザや新型コロナウイルスへの対応は、日頃からの対策と、発生時の迅速な対応ルールを
社内で共有し、徹底することが大切です。
このことが、従業員の健康を確保し、結果として企業の事業継続性を高めることにつながります。
従業員が安心して働ける職場環境を維持するために、継続的な取り組みを進めることをおすすめします。


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