【過労死等ゼロに】健康的に働ける職場環境づくりのために取り組みたいこと
(企業には、労働契約に伴い、健康を損なうことなく
安全に働ける環境をととのえる「安全配慮義務」があります。
過労死等への対策を講じることは、この法的な責務を全うし、
働き続けられる組織を維持するための大前提といえます。
過労死等をめぐる最新の状況については、
国が毎年公表している「過労死等防止対策白書」
(以下、白書)にくわしくまとめられています。
白書では、過労死等の状況や労災に関する傾向の分析に加え、
企業による対策の実施状況などが詳細に報告されています。
今回の記事では、白書を踏まえて、
企業による過労死等対策の必要性や、
企業と従業員が取るべき行動を解説します。
過労死等とは
過労死等とは、法令により以下のとおり定義されています。
著しい疲労の蓄積をもたらす要因であり、
脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼすものと考えられています。
そのため、企業においては長時間労働の是正や
休息の確保が重要とされています。
脳・心臓疾患および精神障害事案における労災請求件数
最新の白書では、脳・心臓疾患および精神疾患事案における
労災請求件数データが示されています。
①脳・心臓疾患事案における労災請求件数
白書によると、脳・心臓疾患事案による請求件数は、
2020年度(令和2年度)から2021年度(令和3年度)において
減少したものの、2022年度(令和4年度)から増加に転じ、
2023年度(令和5年度)には大きく増加しています。
【脳・心臓疾患事案による請求件数】
安全に働ける環境をととのえる「安全配慮義務」があります。
過労死等への対策を講じることは、この法的な責務を全うし、
働き続けられる組織を維持するための大前提といえます。
過労死等をめぐる最新の状況については、
国が毎年公表している「過労死等防止対策白書」
(以下、白書)にくわしくまとめられています。
白書では、過労死等の状況や労災に関する傾向の分析に加え、
企業による対策の実施状況などが詳細に報告されています。
今回の記事では、白書を踏まえて、
企業による過労死等対策の必要性や、
企業と従業員が取るべき行動を解説します。
この記事のポイント
- 企業は安全配慮義務として過労死対策を講じる法的責務がある
- 脳・心臓疾患や精神障害の労災請求件数は近年増加傾向にある
- 長時間労働の削減と相談体制整備の両面からのアプローチが重要
過労死等とは
過労死等とは、法令により以下のとおり定義されています。
- 業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
- 業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
- 死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害
著しい疲労の蓄積をもたらす要因であり、
脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼすものと考えられています。
そのため、企業においては長時間労働の是正や
休息の確保が重要とされています。
脳・心臓疾患および精神障害事案における労災請求件数
最新の白書では、脳・心臓疾患および精神疾患事案における
労災請求件数データが示されています。
①脳・心臓疾患事案における労災請求件数
白書によると、脳・心臓疾患事案による請求件数は、
2020年度(令和2年度)から2021年度(令和3年度)において
減少したものの、2022年度(令和4年度)から増加に転じ、
2023年度(令和5年度)には大きく増加しています。
【脳・心臓疾患事案による請求件数】

(出典)厚生労働省『令和7年版 過労死等防止対策白書(概要版)』P6(一部抜粋して掲載)
「死亡」事案は、長期的には「横ばい」または
「減少」の傾向はあるものの、
2022年度(令和4年度)以降は増加に転じており、
企業における過労死等への対策の重要性は依然として高い状態であるといえます。
②精神障害事案における労災請求件数
精神障害事案による請求件数は年々増加しています。
全体の件数では2024年度(令和6年度)の件数は、
2010年度(平成22年度)と比べて3倍以上増加しています。
「自殺以外」の事案をみると、
2024年度(令和6年度)は2010年度(平成22年度)から
3.5倍にも増加しており、
長期的にみても年々増加している傾向が分かります。
【精神障害事案による請求件数】
「死亡」事案は、長期的には「横ばい」または
「減少」の傾向はあるものの、
2022年度(令和4年度)以降は増加に転じており、
企業における過労死等への対策の重要性は依然として高い状態であるといえます。
②精神障害事案における労災請求件数
精神障害事案による請求件数は年々増加しています。
全体の件数では2024年度(令和6年度)の件数は、
2010年度(平成22年度)と比べて3倍以上増加しています。
「自殺以外」の事案をみると、
2024年度(令和6年度)は2010年度(平成22年度)から
3.5倍にも増加しており、
長期的にみても年々増加している傾向が分かります。
【精神障害事案による請求件数】

(出典)厚生労働省『令和7年版 過労死等防止対策白書(概要版)』P7(一部抜粋して掲載)
精神障害・自殺事案に関しては、
2011年(平成23年)に策定された
「心理的負荷による精神障害の認定基準」に基づき
労災認定が行われてきました。
さらに、2023年(令和5年)労災認定基準改正で
カスタマーハラスメントが評価項目に加わったことなどにより、
2023年度(令和5年度)以降の請求件数が増加していると考えられています。
過労死等防止のために取り組むべきこと
過労死等を防止するためには、
まず基盤として「労働時間の適正な把握」や、
事業主による「健康づくりへの積極的な支援」が欠かせません。
そのうえで、ワーク・ライフ・バランスのとれた職場環境の推進や、
労働者が心理的な不安を感じることなく相談できる体制整備など、
ハード・ソフト両面での組織的な対応が求められます。
【過労死等防止のための取組】
厚生労働省では、過労死等防止の対策として、
具体的に以下のような取り組みを挙げています。
精神障害・自殺事案に関しては、
2011年(平成23年)に策定された
「心理的負荷による精神障害の認定基準」に基づき
労災認定が行われてきました。
さらに、2023年(令和5年)労災認定基準改正で
カスタマーハラスメントが評価項目に加わったことなどにより、
2023年度(令和5年度)以降の請求件数が増加していると考えられています。
過労死等防止のために取り組むべきこと
過労死等を防止するためには、
まず基盤として「労働時間の適正な把握」や、
事業主による「健康づくりへの積極的な支援」が欠かせません。
そのうえで、ワーク・ライフ・バランスのとれた職場環境の推進や、
労働者が心理的な不安を感じることなく相談できる体制整備など、
ハード・ソフト両面での組織的な対応が求められます。
【過労死等防止のための取組】
厚生労働省では、過労死等防止の対策として、
具体的に以下のような取り組みを挙げています。

ここからは、それぞれの取り組みについてくわしく解説します。
長時間労働の削減
過労死等防止の柱となるのが「長時間労働の削減」です。
長時間労働は、著しい疲労の蓄積をもたらし、
メンタルヘルス不調や脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼすといわれています。
長時間労働を前提としない健全な働き方を定着させるためには、
企業側の体制づくりと職場全体の意識改革が欠かせません。
①適正な労働時間の把握
まず重要なことは、「適正な労働時間の把握」です。
客観的な方法(勤怠システム、ICカード、PCログ等)で
労働時間を記録するだけでなく、
その記録と実際の労働実態に乖離がないかを定期的に確認し、
サービス残業や過少申告を防がなければなりません。
特に、自己申告制を採用する場合は、企業側の十分な説明と、
実態との乖離がある際の是正措置の徹底が不可欠です。
実態に基づいた管理を行うことで、
過重労働の早期発見と改善につながります。
参考|厚生労働省『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』
②36協定の周知
次に、従業員への36協定の周知です。
とりわけ、直接業務指示を出す管理職の理解は不可欠です。
従業員自身はもとより、残業を命じる立場である上長が
法定の限度時間や特別条項の内容を理解していなければ、
適切な運用はできません。
社内での説明会や研修、社内イントラネットでの情報共有などにより、
あらためて協定の意味と自社の時間外労働の限度時間、
遵守の必要性を継続的に伝えることが大切です。
③長時間労働につながる取引慣行の是正
近年重要視されているのが、受託業務や製造、物流など、
外部との取引が労働時間に直結する業種における、取引慣行の是正です。
短納期発注や頻繁な発注内容の変更などは、
結果として企業の内部で長時間労働を生み出す要因となります。
取引先に対して適正な納期等の協議を行い、
無理な要求には改善を要請するなど、
取引先との一連の流れも含めて労働負荷の低減を図る姿勢が求められます。
過重労働による健康障害の防止
過重労働は脳・心臓疾患の発症に大きな影響を及ぼすと考えられています。
厚生労働省の検討会報告書等においても、
時間外・休日労働時間が「月100時間」を超える、
あるいは「2〜6か月平均で月80時間」を超える場合には、
業務と発症との関連性が強いと評価されており、
健康障害のリスクが急激に高まるとされています。
これらの基準を念頭に置いた、適切な労務管理が不可欠です。

【企業の取り組み 例】
【従業員の取り組み 例】
なお、厚生労働省は、過重労働による健康障害を防止するため、
従業員の疲労蓄積度を判定するための「自己診断チェックリスト」を公開しています。
参考にしてください。
参考・ダウンロード|厚生労働省『労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(2023年改正版)』
働き方の見直し
「働き方の見直し」は、過労死等を防止するうえで、
「長時間労働の削減」と並んで重要な柱となります。
①ワーク・ライフ・バランスのとれた働き方ができる職場環境づくり
業務量の適正化、柔軟な働き方の選択肢、
休暇の取得を阻害しない職場環境づくりを行います。
従業員が私生活と仕事を無理なく両立できる環境は、心身の健康保持に直結します。
②計画的な年次有給休暇の取得
計画的付与を含め、企業と従業員が話し合って休暇を取得しやすい体制を整えます。
休暇取得は、ストレス回復や健康維持が進み、過労死等の未然防止に効果的です。
③勤務間インターバル制度の導入
勤務間インターバル制度とは、終業から次の始業までに一定の休息時間を確保するものです。
睡眠不足や疲労蓄積を防ぎ、過重労働のリスクを低減できます。
④テレワークの適切な活用と環境整備
在宅勤務などのテレワークは、通勤負担の軽減や柔軟な時間配分を可能にする一方、
「公私との区別のつきにくさ」による長時間労働を招くリスクもあわせ持っています。
導入にあたっては、適切なテレワーク環境の整備をセットで行うことが、
心身の健康と業務効率化を両立させる鍵となります。
職場におけるメンタルヘルス対策の推進
企業は、従業員の心の不調を早期に察知し支援できる職場環境づくりを進める必要があります。
①メンタルヘルスケアの体制づくり
相談窓口を設置したり、従業員に対して、
メンタルヘルスに関する研修や情報提供を実施します。
従業員のメンタルヘルスケアの意識を高めることは、従業員自身の不調に気づくだけでなく、
上司や同僚など周囲の者が不調に気づき、専門家につなげる効果も期待されます。
②ストレスチェックの実施
ストレスチェックの実施は、従業員のメンタルヘルス不調の未然防止を目的として行われます。
従業員自身もストレスチェックの結果から自分のストレス状況を理解し、
セルフケアに取り組むことが求められます。
企業と従業員が協力して心の健康を守ることで、過労死等のリスクを大きく低減できます。
なお、ストレスチェックの実施が努力義務である従業員数50人未満の事業場も、
2025年の法改正により義務化が決定しました(公布後3年以内に施行)。
実施に向け、制度内容を理解しておくことをおすすめします。
職場のハラスメントの予防・解決
職場のハラスメントを防ぐには、予防・早期発見・解決・再発防止まで
一連の対策を継続的に行うことが重要です。
また、従業員自身だけでなく、周囲の人もハラスメントに気づいた段階で
相談窓口へ連絡することが重要です。
特に従業員が安心して相談窓口を利用できるよう、「相談者のプライバシー保護」と
「相談を理由とした不利益な取り扱いの禁止」を徹底し、
周知することが法的な義務としても極めて重要です。
組織全体で「見過ごさない」姿勢を共有することが、
安心して働ける職場づくりにつながります。
- 時間外労働、休日労働の削減
- 従業員の睡眠時間の確保、生活習慣病予防等の支援
- 障害、高齢等の従業員について、特性に応じた過重労働防止のための配慮
- 入社間もない従業員への過重負担を防ぐため、仕事量の調整やメンタルヘルス対策を実施
- 長時間労働者に対する法令に基づく医師による面接指導等の必要な措置
【従業員の取り組み 例】
- 睡眠時間の確保や健康管理に努める
なお、厚生労働省は、過重労働による健康障害を防止するため、
従業員の疲労蓄積度を判定するための「自己診断チェックリスト」を公開しています。
参考にしてください。
参考・ダウンロード|厚生労働省『労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(2023年改正版)』
働き方の見直し
「働き方の見直し」は、過労死等を防止するうえで、
「長時間労働の削減」と並んで重要な柱となります。
①ワーク・ライフ・バランスのとれた働き方ができる職場環境づくり
業務量の適正化、柔軟な働き方の選択肢、
休暇の取得を阻害しない職場環境づくりを行います。
従業員が私生活と仕事を無理なく両立できる環境は、心身の健康保持に直結します。
②計画的な年次有給休暇の取得
計画的付与を含め、企業と従業員が話し合って休暇を取得しやすい体制を整えます。
休暇取得は、ストレス回復や健康維持が進み、過労死等の未然防止に効果的です。
③勤務間インターバル制度の導入
勤務間インターバル制度とは、終業から次の始業までに一定の休息時間を確保するものです。
睡眠不足や疲労蓄積を防ぎ、過重労働のリスクを低減できます。
④テレワークの適切な活用と環境整備
在宅勤務などのテレワークは、通勤負担の軽減や柔軟な時間配分を可能にする一方、
「公私との区別のつきにくさ」による長時間労働を招くリスクもあわせ持っています。
導入にあたっては、適切なテレワーク環境の整備をセットで行うことが、
心身の健康と業務効率化を両立させる鍵となります。
職場におけるメンタルヘルス対策の推進
企業は、従業員の心の不調を早期に察知し支援できる職場環境づくりを進める必要があります。
①メンタルヘルスケアの体制づくり
相談窓口を設置したり、従業員に対して、
メンタルヘルスに関する研修や情報提供を実施します。
従業員のメンタルヘルスケアの意識を高めることは、従業員自身の不調に気づくだけでなく、
上司や同僚など周囲の者が不調に気づき、専門家につなげる効果も期待されます。
②ストレスチェックの実施
ストレスチェックの実施は、従業員のメンタルヘルス不調の未然防止を目的として行われます。
従業員自身もストレスチェックの結果から自分のストレス状況を理解し、
セルフケアに取り組むことが求められます。
企業と従業員が協力して心の健康を守ることで、過労死等のリスクを大きく低減できます。
なお、ストレスチェックの実施が努力義務である従業員数50人未満の事業場も、
2025年の法改正により義務化が決定しました(公布後3年以内に施行)。
実施に向け、制度内容を理解しておくことをおすすめします。
職場のハラスメントの予防・解決
職場のハラスメントを防ぐには、予防・早期発見・解決・再発防止まで
一連の対策を継続的に行うことが重要です。
また、従業員自身だけでなく、周囲の人もハラスメントに気づいた段階で
相談窓口へ連絡することが重要です。
特に従業員が安心して相談窓口を利用できるよう、「相談者のプライバシー保護」と
「相談を理由とした不利益な取り扱いの禁止」を徹底し、
周知することが法的な義務としても極めて重要です。
組織全体で「見過ごさない」姿勢を共有することが、
安心して働ける職場づくりにつながります。

相談体制の整備等
過労死等を防ぐには、従業員が気軽に声を上げられるよう、
早期に不調を把握し対応できる職場環境の整備が重要です。
従業員自身も、いつもと違う疲労感や眠れない、
集中できないなどのサインに気づいたら、
早めに上司・同僚・家族、または医師など
専門家へ相談する意識が大切です。
また、周囲の人も変化に気づいたときは声をかけ、
必要に応じて産業医や保健スタッフなど
専門職につなぐことが早期発見に役立ちます。
おわりに
過労死等の防止は、企業が負う「安全配慮義務」の根幹であり、
事業継続を左右する重大な経営課題です。
白書の統計データでは、
依然として脳・心臓疾患の労災請求件数は高水準で推移し、
精神障害事案は年々増加傾向であることが示されました。
このことからも、企業が過労死等への対策を講じることが
急務であることが分かります。
誰もが健康で充実して働き続けられる社会を支えるための
第一歩として、企業には従業員の不調を早期に察知し、
実効性のある対策を講じることが求められています。)


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