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【2025年度版】賞与支払届と社会保険料の計算方法

賞与は、毎月の給与とは別に支払われる特別な賃金です。
賞与を支払ったときには、賞与支払届の届出が必要となります。

賞与は社会保険料にも関係しており、賞与支払届によって賞与にかかる社会保険料額が決定されます。この保険料は、従業員が将来受給する年金額の計算の基礎となるため、正確な手続きを行うことが求められます。

今回の記事では、賞与支払届の手続きや社会保険料の計算方法について解説します。

届出の対象者は


賞与支払届は、賞与を支給した人のうち、社会保険に加入している
すべての役員・従業員で届出が必要です。
賞与支払月に社会保険料が免除されている育児休業中の従業員や、
社会保険の資格を喪失した従業員も届出が必要です。

届出が不要な賞与とは


賞与支払届の届出が不要な賞与もあります。


7月1日より前の1年間で4回以上支給される賞与は、毎月の社会保険料を決める
基準となる標準報酬月額の対象になるため、賞与支払届の届出は必要ありません。(※)

ただし、年の途中で、賞与の支給回数を4回以上とする賞与規定を新たに設けた場合は、
次の定時決定(7月、8月または9月の随時改定を含む)までは賞与として取り扱うことになっています。

また、労働の対価として支払われる賃金ではない慶弔見舞金(例:結婚祝い、出産祝い)
などは賞与に該当しないため、届出は不要です。

※賞与を年4回以上支給する場合は、定時決定の手続き時に、
年間の賞与の合計額を12で割った額を、毎月の給与に加算します。

賞与支払届の手続き

日本年金機構に登録されている賞与支払予定月のおおむね1か月前に、賞与支払届の用紙が届きます。

年金事務所は、届出用紙に印字される被保険者氏名等の基礎情報を、
賞与支払月の前々月19日までの情報に基づいて作成します。
そのため、社会保険に加入している役員・従業員の氏名の記載が賞与支払届にないときは、
追記する必要があります。賞与支払届の枚数が不足するときは、
届出様式をダウンロードして作成します。



【賞与を支給したとき】

賞与を支給したときは、以下の届出をします。

届出様式:健康保険・厚生年金保険 被保険者賞与支払届/厚生年金保険 70歳以上被用者賞与支払届

添付書類:原則なし

届出期限:賞与を支払った日から5日以内

届出先 :事務センターまたは管轄の年金事務所

届出方法:郵送、電子申請、電子媒体(CD・DVD)、窓口持参

ただし、賞与支払届に記載されている被保険者のうち、賞与が支給されない被保険者がいるときは、賞与支払届の該当者欄に斜線を引いて届出します。

【賞与不支給のとき】

賞与支払月に事業所全体のすべての役員・従業員へ賞与を支給しない場合も、届出は必要です。

届出様式は、賞与支払届と一緒に送付される書類もしくは以下をダウンロードして使用してください。 

賞与支払月が変更になるときの手続き

賞与支払月は日本年金機構に登録されている情報のひとつです。
賞与支払月を変更したときは、5日以内に年金事務所へ以下の届出をする必要があります。

届出様式:健康保険・厚生年金保険 事業所関係変更(訂正)届

添付書類:なし

届出期限:変更の事実が発生してから5日以内

届出先 :事務センターまたは管轄の年金事務所

届出方法:郵送、電子申請、窓口持参

賞与支払時の社会保険料の計算方法

雇用保険料は給与支給時と同じ計算方法ですが、社会保険料は異なります。
賞与にかかる社会保険料の計算は以下のとおりです。

①健康保険料



②介護保険料

介護保険料は40歳以上65歳未満の従業員に対して徴収が必要です。
賞与の支払月に40歳または65歳に到達する従業員がいる場合は注意してください。



健康保険料率・介護保険料率は、加入している健康保険の種類や都道府県ごとに異なります。
協会けんぽに加入している企業は、以下のサイトから都道府県ごとの保険料率を確認し、
保険料額表を使って計算してください。

③厚生年金保険料

厚生年金保険料(現在は一律18.3%)の計算式は以下のとおりです。



標準賞与額とは、社会保険料や税金などを控除する前の総支給額から、
1,000円未満を切り捨てた額です。
社会保険料の計算によって1円未満の端数が出たときは、50銭未満は切り捨て、
50銭以上は切り上げとなります。

社会保険料の計算方法で注意すべき4つのケースとして、年齢到達や産前産後休業・育児休業、
退職について解説します。

【賞与の支払月に40歳・65歳になる従業員の介護保険料】

介護保険は、介護が必要な高齢者を支える保険制度です。
賞与における介護保険料は、40歳に到達した日の属する月から徴収が始まります。
そして、65歳に到達した日の属する月からは徴収が不要になります。
「到達した日」とは、誕生日の前日を指します。



1日生まれの従業員は、特に間違いやすいため注意が必要です。



【70歳以上の従業員の厚生年金保険料】
70歳以上の被保険者は厚生年金保険に加入する資格を失うため、厚生年金保険料の徴収は不要です。

【賞与支払月に退職予定の従業員がいる場合】
賞与の支払月に退職予定(退職日が末日以外)のときは、社会保険料を徴収しません。

【賞与支払月に産前休業に入る従業員がいる場合】
産前産後休業や育児休業中のときは、社会保険料を徴収しません。

また、産前休業などに入る場合、同じ月に給与と賞与が支給されても、
社会保険料の徴収月が異なるケースもあります。
以下の例を参考にして、慎重に確認を進めてください。



社会保険料計算時の賞与額の上限

社会保険料の対象となる賞与額には上限があり、法令によって、健康保険(介護保険含む)と
厚生年金保険でそれぞれ定められています。

【健康保険】4月1日から翌年3月31日までの賞与の累計額573万円まで

年間(4月1日から翌年3月31日)の賞与額が累計573万円を超えるときは、
健康保険 標準賞与額累計申出書を作成し添付します。

年度途中の転勤や転職などで被保険者資格の取得・喪失があった場合、
標準賞与額の累計は保険者単位(協会けんぽ、健康保険組合など)で行われます。
したがって、同じ年度内に複数の被保険者期間がある場合は、同一の保険者である期間に
決定された標準賞与額を累計することとなります。

育児休業等による社会保険料の免除期間中に支払われた賞与や、
資格喪失月に支払われた賞与については、保険料の徴収は行われません。
ただし、これらの賞与についても標準賞与額は決定され、年度の累計額には含まれます。


【厚生年金保険】支給1回(同じ月に2回以上支給されたときは合算)の賞与額150万円まで

同じ月に賞与が2回支払われる場合は、その合計額が150万円に達するまで
厚生年金保険料がかかります。

おわりに

多くの企業では、6月から8月にかけて夏季賞与が支給されます。

労務担当者にとっても、6月から8月は年度更新や定時決定、高年齢者・障害者雇用状況等報告書の
作成などの年に一度の重要な手続きが集中する期間でもあります。

賞与支払届の提出期限は支給日から5日以内と短く、迅速かつ正確な手続きが求められます。

賞与の支給額決定から計算、振込、そして各種手続き完了までの流れをスムーズに進めるためには、
事前に計画を立て、それぞれの期限を把握しておくことが重要です。
計画通りに対応できるよう、早めに準備を進めておくことをおすすめします。

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