【基礎知識】知っておきたい労働時間の適正な把握
厚生労働省は企業における労働時間の適正な把握のポイントをガイドラインに示しています。
そのため企業は、ガイドラインの内容を踏まえ適切に対応する必要があります。
今回の記事では、労働時間の適正な把握の必要性や、企業の対応として必要なことなどについて解説します。
労働時間の適正な把握の必要性
近年、働き方改革の一環として、政府による長時間労働問題の是正に向けた取り組みが強化されています。
しかし、依然として長時間労働の削減は多くの企業で課題となっているのが現状です。
こうした課題の解決に向けては、労働時間を適正に把握することが欠かせません。
労働時間が適正に把握できていない場合、以下のようなリスクが考えられます。
ガイドラインについて
厚生労働省では、企業による労働時間の適正な把握のためのガイドラインを公表しています。
企業はこのガイドラインを踏まえた対応が必要です。
参考|厚生労働省『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(リーフレット)』
以下は、ガイドラインの適用範囲です。
1 対象となる事業場労働基準法のうち労働時間の規定が適用されるすべての事業場が対象です。
2 対象となる従業員原則としてすべての従業員が対象となります。
ただし、以下の①②のいずれかに該当する従業員は適用除外となります。
①労働基準法の労働時間の規定が適用されない者・管理監督者・農業、畜産、養蚕、水産の業務に従事する者・監視または断続的な業務に従事し、労働基準監督署長の許可を受けた者
②みなし労働時間制が適用される者
なお、対象とならない従業員についても、健康の確保を図るため、適正な労働時間管理を行う責務があることに留意してください。
労働時間とは何か
労働時間の適正な把握のためには、まず労働時間とは何かを理解しておく必要があります。
1 労働時間とは労働時間とは、企業の指揮命令下に置かれている時間を指します。
これは業務を行う時間だけではありません。
なお、指揮命令下に置かれている時間は、以下の図に示すとおりです。
そのため企業は、ガイドラインの内容を踏まえ適切に対応する必要があります。
今回の記事では、労働時間の適正な把握の必要性や、企業の対応として必要なことなどについて解説します。
この記事のポイント
- 労働時間の不適切な把握は、賃金未払いや従業員の健康障害、人材流出などの重大なリスクを招く。
- 労働時間は「企業の指揮命令下に置かれている時間」を指し、着替えや待機時間も該当する場合がある。
- 企業は原則として客観的な記録(タイムカード等)による始業・終業時刻の確認と、関連書類の保存義務がある。
労働時間の適正な把握の必要性
近年、働き方改革の一環として、政府による長時間労働問題の是正に向けた取り組みが強化されています。
しかし、依然として長時間労働の削減は多くの企業で課題となっているのが現状です。
こうした課題の解決に向けては、労働時間を適正に把握することが欠かせません。
労働時間が適正に把握できていない場合、以下のようなリスクが考えられます。
・過重な長時間労働
・割増賃金の未払い
・36協定で定める時間外労働や休日労働の上限超え
・長時間労働による従業員の健康障害
・優秀な人材の流出 など
ガイドラインについて
厚生労働省では、企業による労働時間の適正な把握のためのガイドラインを公表しています。
企業はこのガイドラインを踏まえた対応が必要です。
参考|厚生労働省『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(リーフレット)』
以下は、ガイドラインの適用範囲です。
1 対象となる事業場労働基準法のうち労働時間の規定が適用されるすべての事業場が対象です。
2 対象となる従業員原則としてすべての従業員が対象となります。
ただし、以下の①②のいずれかに該当する従業員は適用除外となります。
①労働基準法の労働時間の規定が適用されない者・管理監督者・農業、畜産、養蚕、水産の業務に従事する者・監視または断続的な業務に従事し、労働基準監督署長の許可を受けた者
②みなし労働時間制が適用される者
・事業場外で労働する者で、労働時間算定が困難なとき
・専門業務型裁量労働制が適用される者
・企画業務型裁量労働制が適用される者
なお、対象とならない従業員についても、健康の確保を図るため、適正な労働時間管理を行う責務があることに留意してください。
労働時間とは何か
労働時間の適正な把握のためには、まず労働時間とは何かを理解しておく必要があります。
1 労働時間とは労働時間とは、企業の指揮命令下に置かれている時間を指します。
これは業務を行う時間だけではありません。
なお、指揮命令下に置かれている時間は、以下の図に示すとおりです。

労働時間に該当するかの判断は、労働契約や就業規則等の定めのみで判断できるものではありません。
上図に記載のとおり、客観的に見て従業員の行為が企業により事実上強制されているか、参加を余儀なくされたものかなど、個別具体的な状況によって判断する必要があります。
2 労働時間とされるもの以下の①②に該当する時間は、原則として企業の指揮命令下に置かれていると判断されるため、労働時間として取り扱います。
①業務に従事する時間「始業時刻から終業時刻までのあいだの時間」は労働時間となります(ただし、休憩時間は除きます)。
②業務のための準備時間、業務終了後の後始末等の時間企業の指示により、事業場内における「業務に必要な準備行為」や「業務終了後の後始末」などに要する時間は、業務開始前や業務終了後であっても労働時間となります。
(例)・制服などの着用を義務付けている場合の着替えの時間・開店前準備の時間・事業場の清掃時間・朝礼時間 など
作業着や制服などへの着替え時間は、安全面や衛生面の観点から企業が着用を義務付けているため発生するものです。
また、着替えのために更衣室を用意しているケースも多く見受けられます。
そのため着替え時間は、「事実上強制されている時間」として、労働時間に該当する可能性が高いです。
ただし、始業前のランニングや終業後の私用外出など、従業員の個人的な都合による着替え時間は労働時間には含まれません。
③手待時間企業から指示があった場合にすぐ業務に従事できるよう待機する時間は、労働から離れることが保障されている時間とはいえないため、労働時間となります。
(例)・トラックドライバーの荷待ち時間・休憩時間中の電話当番、来客対応の時間 など
休憩時間は、労働から離れることが保障されている必要があります。
そのため、業務を行っていなくても労働から離れることが保障されているとはいえない状態であれば労働時間となります。
たとえば休憩時間中に電話や来客対応を求められている場合は、実際の対応有無にかかわらず、労働時間に該当するといえます。
また、たとえ休憩時間中に電話や来客対応を求められておらず、外出も自由とされる時間であったとしても、やむを得ずそれらの対応を行った場合、その時間は労働時間とみなされます。
④所定労働時間外の研修・教育訓練の受講時間業務上、参加を義務付けている研修や教育訓練の受講時間は、労働時間となります。
なお、所定労働時間外に開催される場合、以下のような観点等から、実態として参加を義務付けているか否かが検討されます。
・就業規則上で、研修・教育訓練の不参加が減給処分等の不利益な取扱いの対象とされているか
・受講内容と業務との関連性の強さ(不参加により業務に具体的な支障が生ずるか否か) など
⑤健康診断の受診時間一般健康診断と特殊健康診断によって、労働時間に該当するかの考え方は異なります。
【一般健康診断】一般健康診断の受診時間を労働時間とするか否かは、労使間の話し合いによって決められます。
しかしながら、従業員の健康確保は事業の円滑な運営に必要なものであり、受診時間を労働時間とすることが望ましいとされています。
【特殊健康診断】特殊健康診断は、業務を行うにあたり、従業員の健康確保のため当然に実施しなければなりません。
そのため、受診時間は労働時間となります。
上記①〜⑤以外の時間についても、実態として企業の指揮命令下に置かれていると判断される場合など、労働時間となる可能性があります。
企業が行うべきこと
企業は労働時間の適正な把握のため、以下のような措置を講じなければなりません。
1 始業・終業時刻の確認および記録企業は、従業員の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、以下の方法により適正に記録しなければなりません。
(1)原則的な方法原則として、以下のいずれかの方法による記録が必要です。

(2)やむを得ず自己申告制で労働時間を把握する場合やむを得ず、原則的な方法ではなく自己申告制によらざるを得ない場合、次の措置を講じる必要があります。
(2)やむを得ず自己申告制で労働時間を把握する場合
やむを得ず、原則的な方法ではなく自己申告制によらざるを得ない場合、次の措置を講じる必要があります。

2 賃金台帳の適正な作成従業員ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数などの事項を適正に記入しなければなりません。
賃金台帳に上記の必要事項の記入がない場合や故意に虚偽の労働時間数を記入している場合は、30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。
3 労働時間の記録に関する書類の保存労働時間の記録に関する書類について、5年間(当分のあいだ3年間)保存しなければなりません。
(例)・労働者名簿・賃金台帳・出勤簿やタイムカード・残業命令書、残業報告書 など
4 労働時間を管理する者の職務労務管理の担当部署の責任者は、「労働時間が適正に把握されているか」「過重な長時間労働が行われていないか」など労働時間管理の適正化に関する事項を管理します。
労働時間の管理上の問題点を把握した場合は、その解消を図ることが必要です。
5 労働時間等設定改善委員会等の活用事業場の労働時間管理の状況を踏まえ、必要に応じて「労働時間等設定改善委員会」などの労使協議組織を活用し、労働時間管理の現状の問題点や解消策などの検討を行う必要があります。
おわりに
フレックスタイム制や変形労働時間制など、どのような労働時間制を採用するかは、企業によってさまざまです。
また、テレワークの普及など、近年では働き方の多様化が進んでいます。
自社が採用する労働時間制や働き方によっては、労働時間の管理は煩雑な作業となる場合もあります。
自社にあった勤怠管理システムを使用するなど、正確かつ効率良く把握できる方法を検討することもおすすめします。


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